長い歴史も、濃い一秒一秒の集まり(『悠久の一刻』制作裏話)

 

おはこんばんにちは、MasaDoです。

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はじめに

 この記事は、「過去曲の裏話を記事に書き留めていこう」という気持ちから生まれた、自作曲制作裏話シリーズの第1弾です。

 

 

今作はコレだ!

 この記事では、こちらの曲について振り返っていきます。

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こちらは、電通大の非公認DTMサークルであるUECDTMから12/31にリリースされたフリーアルバム『一音十色』(いちおんといろ)の7曲目に収録された、『悠久の一刻』(ゆうきゅうのいっこく)です。

 

 

手順の話

 今回も例によって、下のような展開の案出しメモを作ってから作曲に挑みました。

案出しメモ

載せ方、雑かよ。

 

 

発想の手がかり

 今回は珍しく「何を表現するか」の項を最初に書きませんでした。というのも、今回のアルバムのテーマが「一音コンピ」であり、ある1つの音声ファイルを決めて、それにエフェクトなどをかけることによって曲の中心とするというルールで作りました。そのため、何を表現するかの前に、

 

「まずその音声に色々エフェクトをかけてみて考える」

 

という作業をしました。僕はまずその音声の使い方を考えました。音程のない日常音だったので、パーカッション類に使おうかと考えました。音声ファイルを波形の尖った部分でカットして使ってみたり、EQである帯域の周波数だけデカくしたり、リバーブで空間を広くしたりしてみました。するとなんと、

 

偶然時計の針みたいな音が出来上がったのです。

 

ひらめいた!

 

 ということで、当時の自分の作曲テーマ「冒険」とこの時計の針みたいな音を掛け合わせて、「町を見守る時計塔の話」を曲にしようと考えたわけです。

 

 

時計にちなんで

 今回は時計塔の話を描くということで、時の刻みに合わせた曲にするために、

 

BPM60、5拍子

 

にするという発想がすぐに浮かびました。また、

 

ちょうど1分ごとに鐘が鳴って場面が変わる

 

という小細工の発想もここで生まれます。

 

 

いつもの如く「明→暗→明」

 そういったこだわりを随所に散りばめつつ、曲全体の展開も考えるわけですが、僕の曲あるあるとして、

 

曲の展開が「明るい→暗い→明るい」になりがち

 

というのがあり、過去作『Moratorium』や『そらのたびロード2』などが当てはまります。今作も例外ではありません。

 しかしこれには理由があり、

  • 始まりが第一印象を与えるので、楽しく曲を聴き始めたい
  • でも気持ちの上がり下がりはつけたいから暗い曲調も書く
  • でも最後は胸糞悪いモヤモヤした状態で曲を聴き終わりたくない

というものです。1つ目と2つ目はやんわりと思っている程度ですが、特に3つ目の理由が僕の中で一番強く、現状暗い曲調で終わる曲は書いたことがありません。これはお遊びで作曲していたときからずっとです。今後暗い状態で曲を終わらせる必要がある時が来たら、後味が悪くならないようかなり気を遣うつもりです。

 

というか、「暗い→明るい」の部分はどんな音楽でもめっちゃ気持ちいいのでは?

 

 まぁそれはともかく、「明→暗→明」に則ることが決まったので、そこから「時計塔のある町の繁栄→災害や戦争による終末の世界観→何度でも立ち上がり復興する心のポジティブさ」と対応付けました。

 

 

ラストフレーズが最初にできた

 さて、やっと作曲に挑む僕でしたが、今回の作曲はラストフレーズ(完成版では4分以降の部分)から行いました。なぜなら、

 

メロディ作りは時間を追うごとに雑になっていく

 

からです。ラストフレーズは、暗い曲調から解放されて、この曲で一番盛り上がる部分なので、疲弊してダメになる前に丁寧に書いてしまいたかったのです。それはもう

 

音楽だけで泣いちゃうくらいのすんげぇエモいフレーズ書いてやろう

 

ぐらいの勢いで。今回は本当に泣かせる気満々でした。結果、

 

無事ラストフレーズ以外のメロディが雑になりましたけど。

 

(でも、コード進行は曲全体めっちゃ練りましたよ...)

 

 

今回は曲だけじゃない

 なんとか作曲をし終える僕ですが、実は今回のメインの作業は作曲だけではなかったのです。

 

今回は、アルバムジャケットやクロスフェード動画といった、グラフィックデザインを全て僕が担当したのです!!

 

すごいでしょ!

 

ここ最近UECDTMのアートディレクター*1の引継ぎ問題が浮き彫りになっており、僕が引き継ぐ予定になっています。実は今回の一音コンピ、僕のアート担当の予行演習企画という裏テーマもあったのです。

 ちなみに、曲順決めやタイトル決めといった、グラフィック以外の運営部分にもちょっと関わりました。正直今回トリを狙ったつもりでした。トリにこれを流して、聞いた人全員を泣かせる予定でした。でも、

 

「最後の曲でそれまでの空気をぶっ壊してもらう」という案が面白かったのでそうしました

 

そういう経緯で僕の曲は7曲目になったのです。

 

 

動画化について

 また、例によってYouTubeにアップするために動画も作成したのですが、今回は気合の入り方が違いました。なんと、

 

動画に使う時計の素材をイチから作ったのです。

 

その素材がこちら。

悠久の一刻の動画用の時計と時計の針

 この素材はAdobe Illustratorを使って作りました。もう載せてしまったので、この素材は自作発言さえしなければ商用・非商用問わず使っていいことにします。aiファイルじゃなくてpng書き出ししたものなので多少使いづらいと思いますが。クレジット表示は無くてもいいですが、あると僕が大変喜びます。

 この時計の針の形もイラレで作成しました。長針の形は「U」になっていて、短針の形は「Q」を重ねたものになっています。

 

UQの一刻、なんつって...

...

 

 

 

 それはそうと、こんな素材を自分で作ったという点で、気合の入り方が違います。しかも動画でちゃんと動かしました。その完成品がこちらです。

youtu.be

秒針を一秒一秒動かすの、結構大変でした。BPM60にしたおかげで音ハメがラクチンだったのが救いでした。

 

 

おわりに

 今回は我ながら僕の自作曲の中でも屈指の名曲が生まれたと思っています。「冒険」がテーマの作曲に一旦区切りをつけようとも思っていたので、その区切りをつける前の最後の1曲だったということも、この気合の入りようを後押ししたのでしょう。その反動で、現在若干燃え尽き症候群に陥り気味だったりします。

 次回作は近日公開となります。それまでワクワクしながらしばしお待ちください。また、次回から作曲テーマが「身近にあるけど気付かない趣深さ」となります。

*1:ジャケットやクロスフェードといったグラフィック面の監督をする人という意味でそう呼んでいます